ONSA apartment. 保健室 グリーフワーク:心のケアのしかた

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おかえりなさい。



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この場所があなたにとって、
安心して居られる場所になれば、嬉しいです。

私たちは弱くて、折れそうになってしまう。でも、それでもいい。
思い切り泣いた後、不思議と
自然に立ち上がる強さが湧いてくるから、大丈夫。


ONSA apartment. 保健室 心のケアのしかた


 〜 心の不調や緊張、悲しみや怒りを解放するために


[はじめに]


私たちは去る2011年3月11日に、大きな震災を経験しました。その震災は、日本全体のみならず、世界にも衝撃を与えるほどの規模の大きさとなっています。
被災地は東北と関東の一部ですが、テレビの中継や親戚・友人を通じてなど、多くの人がこの震災を共有しています。

またその後の余震、原発の事故による放射能問題、計画停電などで、多くの方が疲れやストレスを感じています。そのような意味で、まさに私たち日本人全体が、何らかの形で被災を共有していると言っても過言ではないほどの規模に発展しています。

激烈な体験を経た後には、心の調子を崩したり、不調をきたしたりする場合が見られます。しかも今回の災害の規模を考えれば、影響を受ける人の人数は、計り知れないものになると思われます。影響を受ける人の数に対して、ケアーを提供できる人数が、圧倒的に不足しているのは明白です。

そのため、本「心のケアのしかた」では、自分でできる心のケアー対策を、説明することにいたしました。
一人でも多くの方が、ストレスの影響を最小限にとどめ、前を向いて歩いてゆける手助けができればと願っています。


[心の過度な不調やストレス……PTSD(心的外傷後トラウマ障害)とは?]


この文章をはじめるにあたり、自己紹介をさせてください。
私は、藤沢優月と申します。
普段、本を書く仕事をしています。『夢をかなえる人の手帳』シリーズという本が、私の代表作です。その他、心理学系の本の著作が2作あります。
私は自分なりの理由から、自分が生き抜くために、臨床心理士の資格を持つセラピストから心理学の訓練を受け、同時に分析も受けました。それは7年間に渡りました。その後、それらの知識を活かし、今はワークショップと文筆を8年間行っています。

私は、2種類にわたるPTSDの体験者です。
PTSDとは何かというと、「Post-traumatic stress disorder」の頭文字を並べたもの。英語をそのまま素直に訳すならば、「トラウマ的体験の後に心に生じる、ストレスと不調」という意味です。

私のPTSD経験のうち最初のものは、生まれ育った家庭内の慢性的な精神的虐待(時々、物理的な暴力を含む)によって生じました。そして、PTSDの治療に有効であると思われる、EMDR(眼球運動による脱感作および再処理法)を受けた、日本でさほど多くない被験者であると思われます。

もうひとつの心のストレス障害は、はるか大人になってから起こりました。
2007年に和平合意がゆるやかに崩壊していったのを皮切りに、2008年、当時婚約していた方の母国・スリランカが、内戦に突入したのでした。私はそのまま、身内として戦争体験者となりました。
戦争体験が刻まれた心のショックは、日本の日常に適応するために、そのまま閉じ込められました。そうして私は、二度目のPTSDを体験することになりました。

しかし私の日常はといえば、テレビドラマのような「劇場効果のある」症状に見舞われたわけではありません。それは多くの場合、こんな感じに、私の日常に影響を及ぼしました。

- 感情を感じなくなること、現実に関心がなくなること
- 無気力感や、常に緊張していること
- 眠れないこと、心が混乱すること


私たちの心は、受け止めるのがあまりにも大きすぎるショックを受けた時、心が崩れるのをおさえるため、機能の一部を麻痺させてしまいます。
しかし、その方法による対処が長引くほど逆に、今度は現実感覚がなくなり、疎外感が進み、生き生きした感情を失い、現実に参加するのが難しくなります。

それは、悪循環を作り始めます。トラウマを受けた者をますます孤立させ、トラウマ体験からの回復を遅れさせ、人生を、幸せな状態から遠ざけてしまいます。


今回の震災は、まさに、戦争体験と同じような強烈さを持っているように感じます。被災地はまさに戦場のようであり、中継やニュースを元に、日本中がその様を共有しています。

それら強烈な経験による心の不調の影響を、できるかぎり避けるため、私はこの文章を書いています。
今、私たちの心にどのような動きが起こっていると想定されるのか、どうやったら、心の被害を最小限に防げるのか。
それでは、一緒に考えてゆきましょう。


[なぜ、心のケアが大切なの?]


震災や戦争、災害などが起こった際に、「心のケアが大切」という言葉を耳にします。
それではなぜ、心のケアが大切なのでしょう。

理由は、人の心は、通常では許容不可能な刺激や衝撃を受けると、さまざまな支障を来し始めるからです。
そのようにして受けた心の傷のことを、PTSD(心的外傷後ストレス障害)という名で呼ぶならば、なんだか大げさに聞こえるかもしれません。でも英語訳に忠実に「Post-traumatic stress disorder/トラウマ的体験後の(心の)ストレス(=緊張)と不調」と素直に理解するならば、今の私たちの多くに当てはまり得ます。

「心的外傷後ストレス障害」というと、あたかも大げさなこととして感じてしまうかもしれません。
「私はそんな、大げさな名前のつくような不調ではないわ」と思ってしまう方も、いらっしゃるかもしれません。

ですのでここでは、本来の英語の意味に忠実に「(トラウマ体験後の)ストレスによる心の不調」と呼ぶことにしましょう。
それでも十分、本質をきちんと表現しているからです。


では、このPTSD[心的外傷後トラウマ障害(トラウマ体験後の)ストレスによる心の不調]とは、いったいどんな症状なのでしょう。
具体的な例を挙げて、見てみましょう。

誰でも情報元が見られるように、インターネット辞書のWikipediaから、解説を引用してみます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/PTSD

「PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、危うく死ぬまたは重症を負うような出来事の後に起こる、心に加えられた衝撃的な傷が元となる、様々なストレス障害を引き起こす疾患のことである。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、地震、洪水、火事のような災害、または事故、戦争といった人災や、テロ、監禁、虐待、強姦、体罰などの犯罪など、多様な原因によって生じうる。」


もう少し詳しく、記述を見てみましょう。

「強い衝撃を受けると、精神機能はショック状態に陥り、パニックを起こす場合がある。
そのため、その機能の一部を麻痺させることで一時的に現状に適応させようとする。

そのため、事件前後の記憶の想起の回避・忘却する傾向、幸福感の喪失、感情鈍麻、物事に対する興味・関心の減退、建設的な未来像の喪失、身体性障害、身体運動性障害などが見られる。
特に被虐待児には感情の麻痺などの症状が多く見られる。

精神の一部が麻痺したままでいると、精神統合性の問題から身体的、心理的に異常信号が発せられる。
そのため、不安や頭痛・不眠・悪夢などの症状を引き起こす場合がある。
とくに子供の場合は客観的な知識がないため、映像や感覚が取り込まれ、はっきり原因の分からない腹痛、頭痛、吐き気、悪夢が繰り返される。」


強いショックを受ける経験の衝撃は、人間の心にとって、一気に受け止めるにはあまりにも大きすぎます。
そのため、人は精神を守るために、無意識的に精神の一部を麻痺させることで、目の前の現実に適応しようとします

ところがそれは、人の本来の機能としては、あくまでも一時的なことでしかありません。
ですから当然のことながら、時が経つにつれ、次のような症状が、ひずみとしてあらわれはじめる場合があります。

○ 恐怖・無力感

○ 心的外傷関連の刺激の回避や麻痺
  心的外傷体験の想起不能や、感情の萎縮、希望や関心がなくなる、
  外傷に関わる人物特徴を避けるなど

○ 反復的かつ侵入的、苦痛である想起
  悪夢(子供の場合はっきりしない混乱が多い)やフラッシュバック、
  外傷を象徴するきっかけによる強い苦痛

○ 過度の覚醒
  外傷体験以前になかった睡眠障害、怒りの爆発や混乱、
  集中困難、過度の警戒心や驚愕反応

( Wikipediaより引用)

PTSD[心的外傷後トラウマ障害(トラウマ体験後の)ストレスによる心の不調]とは、これらの症状が1か月以上持続し、社会的、精神的機能障害を起こしている状態を指します。
もちろん、うまく眠れないことや、神経がぴりぴりしてほぐれないこと、恐怖からなかなか解放されないことも含みます。

これら症状が慢性化した場合、心はその重荷やストレスを逃がすために、アルコールや薬物に依存するケースも出てきます。
つまり、ストレスを消すために、さらに精神を麻痺させる方法に進むのです。でも、初期のサインにきちんと対処せずに、二次的で安易な方法をとることは、誰が見ても結果が明らかなように、悪循環に発展してしまいかねません。


[共通する解決方法]


では、それを避けるためには、どうしたらいいのか。
取れる方法は様々ありますし、トラウマの度合いによっても、必要とされる方法は違います。

しかし、一つだけ、決定的に共通している方法があります。
この方法に異存のある人は、専門家においても、おそらくいないでしょう。

その方法とは「話すこと」です。
そして「話すこと」は、心理療法の基本です。
専門用語で「ナラティブ・セラピー」といいますが……とはいえ専門用語を使っているだけで、その本質は「話すこと」。大昔から続く方法です。


痛みを、語ることができること。
受け止めるにはあまりにも大きすぎるショックを、誰かに話すことができること。
「つらい」と言えること。
ショックだった、悲しかったと言えること。それをお互いに受け止め合い、批判したり裁いたりせずに、ありのままで嘆き合えること。


しかしここで、注意したいことが、ひとつあります。
それは、ショックを感じる度合いは、人によって千差万別だということ。

ある人は、大きなトラウマ体験にも、比較的強いかもしれません。でも別の人は同じことに、精神が潰れるような衝撃を受けるかもしれません。
ショックを受ける度合いは、まさに人によって違う。本来、「あの人」と「この人」とを比べることのできないものです。

「私はあの人たちに比べれば大変じゃないから、ガマンしなければいけない」
「あなたは被害が軽い方だから、そんな風に悲しむのはおかしい」

ということは、ありません。
ショックの受け止め方は、人によって様々。
そしてその捉え方も、人によって様々です。

あなたにとってつらければ、それは、つらいできごとなのです。
そして、あなたの痛みを自覚して、対処してあげられるのは、ただ一人。「あなた自身」です。


家族問題の専門家であるクラウディア・ブラックは、著書の中で、次のように述べています。

「私は痛みを感じている。だから、癒されるに値する」
(* 『子どもを生きれば、おとなになれる』クラウディア・ブラック/アスク・ヒューマンケア)


[心の衝撃の度合いによって、ケアーの受け方を考える]


私の経験したトラウマは、戦争と暴力という、比較的強烈なものでした。
ひとつめの、子どもの頃からのトラウマ体験は、現実世界の中で何とか生きられるようになるまで、7年という継続的な月日と数々のセラピー(EMDR含む)を必要としました。子どもの頃のトラウマは、自分に何が起こっているかよくわからないため、一般的に言って、時間がかかる場合が多いのです。

2つ目の戦争体験ですが、戦争という大きな事実を前にして、何も為すすべがない自分の無力さが、私を「心の不調」へとゆっくり導いてゆきました。
しかし決定打となったのは、本当に残酷な形で、人の死を見てしまったことです。その記憶にフタをするために、私の心は、まるで痛点を麻痺させたかのような状態のまま、3年の月日を過ぎさせました。その間、自分がいったい生きているのか死んでいるのか、よくわからないままだったことを覚えています。

被災され、人を亡くされたり、人の死を目撃したりしている方の心には、とりわけ強いストレスがかかっていることが想定されます。
そのような方が特別なケアーを受けられることを、切に望みます。

しかし、目下の混乱する混乱の中、その機会がうまく得られなくても、上にご紹介した方法「話すこと」(広い意味での「ナラティブ・セラピー」)、そして以下にご紹介する方法は有効です。
なぜなら決めつけず、裁かず、「話し」「耳を傾ける」という方法は、どんな場面においても勧められます。私たちは大昔から、そうやって助け合って、生きてきました。

スリランカには「心理療法」という概念は、おそらくまだ定着していません。でもお互いに話し、嘆き、心の痛みを分かち合うことで、心の痛みにうまく対処しています。


[国連PKOの職員向け冊子「United Nations Stress Management Booklet」に記載されている、
 ストレスマネージメントの方法]


アメーバニュース(インターネット)に、こんな記事が紹介されていました。
被災地などに出向く、国連PKOの職員向け冊子『United Nations Stress Management Booklet(PDF)』に掲載されている、ストレスマネージメントの方法を、訳出してくださった方がいらっしゃいます。
以下、訳出された箇所を引用させていただきます。

– - – - – - – - – - – - – - – - –
「国連PKOの職員向け冊子
 『United Nations Stress Management Booklet』に
 記載されている、
 ストレスマネージメントの方法」

・大変な出来事の後に様々な心的症状がでるのは、正常なことです。
 「私は弱い」と自己批判したり、自分に厳しくならないでください。



・「他の人が私のことを悪く思ったり、弱虫だと思ったりするのでは?」と
 考えないでください。



・自分の感情を我慢して溜め込まず、思っていることを口に出して表現しましょう。
 たいへんな経験を乗り越えるのに役立ちます。
 また、今後出てくるであろうストレスが原因の症状を軽減できます。



・必要な時は助けを求めましょう。



・大変な経験をしたら、すぐに誰か信頼できる人や、体験談を聞く訓練を受けた人に
 話を聞いてもらいましょう。



・困っている、苦しんでいる人の話に耳を傾けましょう。



・休みましょう。



・回復するまで、ゆっくり時間をかけましょう。



・誰かから差し出された助けは受け入れましょう。


アメーバニュース
「震災のストレスに負けない方法」より
http://news.ameba.jp/20110318-73/

(阿久津美穂さん訳出)

元本 [United Nations Stress Management Booklet](リンク済)
– - – - – - – - – - – - – - – - –

ものすごく特別なことをしなければならないと身構えなくとも、これらの知識を知っているだけで、日々の心の持ち方に、とても役に立ちます。
そして「話すこと」「溜め込まないこと」は、ここでも推奨されています。


[癒されてゆくために]


「癒し」という言葉が、手軽に使われるようになりました。
しかし、大きなストレスがかかる体験から回復し「癒される」状態に至るために、心理学では通常、人間が5つの心の段階(ステップ)を踏むと考えられています。

– - – - – - – - – - – - – - – - –

STEP 1・起こったことに目を向けなかったり、軽く見積もる
     (「大したことはないさ」「ウソじゃないの?」/心の防衛反応)
STEP 2・「こんなことが(私に)起こっていいはずがない!!」 怒りを感じる

STEP 3・起こったことを何とかコントロールしようとしたり、何かにすがったりする
STEP 4・コントロールできないことを知り、無力感を覚える

STEP 5・起こったことは起こってしまったことで、変えられないのだと、
     受け入れられるようになる

– - – - – - – - – - – - – - – - –

アメリカの精神科医であり、人が死にゆく時の心の研究・ケアで著名なエリザベス・キューブラー・ロス博士は、この5段階をそれぞれ、
1・否認
2・怒り
3・取引
4・抑うつ
5・受容

と分類しています。

このことを、あらためて考えてみます。
「STEP 1・大したことはないさ」と「STEP 5・受け入れる」では、おなじ「仕方ない」でも、心の状態が大違いなのは分かっていただけるでしょうか。

「STEP 1・大したことはないさ」は、心の麻痺した状態。いずれ、心の不調をきたしてしまう可能性が大きい状態です。心は長い間、強いストレスには耐えられないため、いずれ何かの症状を使って S.O.S を発するからです。

同様に、これら5つのプロセスをゆっくり経ることで……。起こったことを「もう起こってしまって、変えられないのだ」と受け入れた時。
私たちははじめて、新たな現実認識に立って、新しい未来のことを考えられます。
失ったもののことを考えるのをやめ、まだ手の中に残っているものをもとにして、未来を考え始めることができます。


そして、このプロセスの、いずれかの段階で。私たちは失ったものを嘆き悲しみ、がまんしていた感情を解放してあげる必要に迫られることでしょう。
その嘆きのワークのことを、専門用語で「グリーフワーク(grief work)」と言います。PTSD(心的外傷後トラウマ障害)防止や緩和にも有効と言われています。

この「嘆きのワーク/グリーフワーク(grief work)」の具体的方法として、私からは2つの方法をお勧めしたいと思います。私自身も行い、また自分自身でも効果を感じています。
心が軽くなり、身体の緊張や精神のピリピリ感から解放されます。
取り立てて特別なものではなく、自分でもできる方法です。


[WORK 1 「怒りのワーク」をする]

* ある程度健康な方にお勧めする方法です。引き受けるのにとうてい重すぎるトラウマ体験を経験した方は、専門家の援助を受けてください。

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本質:自分の中の怒りを認めて表現する、シンプルなワーク

必要なもの:
・安全な場所
・紙、ペン
・水
・ティッシュ
・必要であればベッドや廃材・廃柱
・自分への思いやり
「震災後3日目、自分でできるケアー」もご参照ください

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スリランカの内戦を経験していた私は、その当時、いったい何を考えていたでしょう?
当時の私の心は、とても矛盾した、いくつもの感情や考えでごちゃごちゃであったことを覚えています。

当時婚約していた方は医師だったため、戦争を受け、難民キャンプに出かけてゆきます。一方の私はといえば、医師免許も持っていなければ、何をすることもできない。しかも戦争という事実にショックを受けていたため、相手方の家族にケアをされる始末でした。そんな自分がふがいなく、無力に感じて、自分に怒りすら感じていました。

しかしそんな中でも同時に、怒りや恨みすら感じていた私がいました。
「なんで私に、こんなことが起こってしまったの!?」
「私の未来は、なんで、こんなことになってしまうの?」
「私の花嫁姿は、どうしてくれるの!?」
「だいたい、いつ終わるの!?」
誰もが大変さを経験しているにも関わらず、そんな気持ちが、自分の中にあることに気づいてしまった時。
私は、自分のわがままさや自己中心さ加減に、ますます罪悪感を覚えました。身内が危険にある中、自分の都合を考えている気持ちを誰にも言えず、私の心はますます閉じてゆきました。


でも、心の構造から客観的に言えば、これは当たり前のことです。
対処するには想定を越えすぎた、突然起こった大きな出来事に想定を狂わされると、人は怒りを感じるのが当たり前です。
その突発的な出来事が、人生の境界線の中に突然に侵入し、私の人生を乱暴に変えてゆくことを、止める術がないからです。

人は全員違います。つまりその人は、その人なりの大変さの基準を持っています。
だから、あなたもあなたの大変さの基準を持っていい。「私」は「私」の怒りを持っていいのです。

たとえば、このようなことが当てはまります。
……もっと大変な人がたくさんいるのは、分かります。……が。

・なんで計画停電なの!? なんで私に?
・疲れてるのに、その上なんで並ばなきゃならないの? 
・この苦しみは、被災を体験した人にしか分からない。普通に暮らせている人になんか分からないよ!
・苦しみを分かったように報道しないでよ!
・被災地だってしんどいの分かるけど、私だってしんどいよ!
・だいたい、なんで私、こんなに無力なの!?

被災地が大変なのは、厳然とした事実です。
でも同時に、降って湧いた出来事によって日常生活を奪われた私の大変さ、そしてそれに伴って湧いてくる「怒り」も事実です。誰もがみんな違って、誰もがそれぞれの度合いで、ショックを受けています。

ですから私たちは、このようなワークをします。「怒り」に対処するために、怒りのパワーそのものを、他人にぶちまける必要はありません。
大切なのは、「怒り」を自分が持っていると「認める」こと。
そして、それを外に出して、表現すること
です。

紙とペン、安全のための水を用意します。
入手できる人は、コピー用紙大の紙を何枚も用意してください。
そして紙の上に、ぶちまけます。
「なんでこんなことが起こるのよ! なんで『私に!?』」

この「なんで、私に!?」が大切です。
なぜなら誰もが、その人なりの理由で、怒りやストレスを感じているのですから。

「何で私が、よりによって今、影響を受けなくちゃならないの?」
「私、今までだって大変だったのに、その上、何でいま私に!?」

「怒りのワーク」を実行している最中に、どんなに荒れても、驚かなくて大丈夫です。
人の心には防衛本能があり、どんな時でも事態を冷静に眺めている、もう一人の自分がいます。この「もう一人の自分」が、いわば安全装置の働きをしていますから、コントロール不能まで荒れ狂うことは、まずありません。
危ういと思ったら、怒るのをやめ、用意してあった水を飲んでください。そして、深呼吸をします。

……そうやってしばらく、「何で、私に!?」を繰り返していると……。

煮えたぎっていた怒りが、涙に変わります。

自分が怒っていることを認めて、受け入れると。
嵐のような感情の後に、無理強いしなくとも、自然な穏やかさがやってきます。
その後に、もう行ってしまってないものより、目の前にあるものの中で、最善を尽くしてゆこうという穏やかさが、自然と芽吹いていることに気づきます。

書いた紙は、破って捨ててしまったり、燃やしてしまうのもお薦めです。
(火事にならないように、くれぐれも気をつけてください。)
このワークをした後は、泣いて疲れてしまうと思いますから、室温の水をたくさん飲んで、ゆっくり眠ってください。おそらくぐっすり眠れるはずです。


私たちがもし、自分の怒り(「なぜ、私に?」)を認めないなら、私たちはいずれ「当たる対象」を探し、その対象に攻撃を向けてしまうでしょう。
それは身近なところから言えば、子どもやお年寄りといった弱者であり、広く言えば、戦争の引き金になります。

でも多くの場合、破壊とは「私が持つ『べき』ではない、でも『私が感じている怒り』」を無視したり、抑圧することによって起こります。
矛先を向け間違えた「怒り」による破壊は、他者を破壊することもありますし、他者を破壊したくないがために、自分を破壊することもあります。

どうかそのようなことにならないよう、あなたの正直な怒りを認めてあげることが大切です。
あなたの正直な怒りは、認められてよいものです。誰の怒りも、どんな怒りも、認められるべき理由があります。
そして、それを心の奥にしまっておかず、適切な形で表現してください。

いま現在、紙が手に入らない方は、一人になれる場所で叫んだり、泣いたりするのも勧められます。
怒りのエネルギーと緊張(ストレス)は、身体にたまる傾向があります。そのため、心理学のワークでは一般的に、ベッドを蹴ったりする方法が、怒りのストレスを解放するための、安全な方法として勧められています。それらが手に入らない方は、周りにダメージを与えないもの……廃材や廃柱などを蹴るのもお薦めです。

そうやって怒りのエネルギーを「安全に」解放することで、実際の人間に手を上げたり、乱暴な言葉を吐くことが避けられます。
同じ理由で、スポーツ(身体を動かすこと)をしてエネルギーを解放することも勧められています。


[WORK 2 「つらい」と口にする/溜め込まないで話す、嘆きのワーク]


– - – - – - – - – - – - – - – - –
本質:自分の中の「つらい」という正直な気持ちを認めて表現する、シンプルなワーク

必要なもの:
・安全な場所
・話を聞いてくれる人(あるいはこの場所)
・(あるいは)紙、ペン
・水
・ティッシュ
・自分への思いやり

やりかた:
・書く
・話す(聞く方は、裁いたり決めつけたりしないで、無心に聞く)

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「つらい」と口にすることは、とても重要です。
言葉にすることで、自分が「どれぐらい」つらかったのかが分かります。
涙が出てくるかもしれません。
確実なことは、「つらい」と認めてあげることができると、身体の中にぎゅっとたまっていた、緊張から解放されることです。

「がんばらなくてはいけない、つらいなんて言ってはいけない」
そうやって気を張っている時は、人の身体も精神も、極度に緊張しています。
少しの音でおびえたり、眠れなかったりするかもしれません。ピリピリすることで、かえって疲れて注意散漫になって、逆に事故を起こしそうになったりするかもしれません。
つまり言えることは、この手のストレスは、まったく現実のためにはならないどころか、かえって現実的な危険を増してしまうということです。

ただでさえ、今でも大変な現実を生き抜いてゆくために。
「つらい」と素直に本音が吐ける「嘆きのワーク」は、やってみる価値があります。

・何もしてあげられなくて、見ているだけしかできない、力のない自分がつらい。
・寒いし、モノがないし、その上これ以上「がんばれ」と言われるのは、とてもつらい。
・この状況がいつまで続くのか、先が見えないのがつらい。
・とにかく疲れた、しんどい。
・今までと、何もかもがあまりにも違いすぎる。つらすぎる。

紙に書いてみてもいい。
誰かに話して、黙って聞いてもらうのもいい。

もし誰にも話せない場合は、このページのメッセージ機能を使ってください。
(ページ上下にあるリンク<< 保健室のメッセージを見る/送るをお読みください)
一人で溜め込んだり、「他の人ががんばっているから、私なんて……」と考えないようにします。

あなたのつらさは、あなたにとって、本当に大切なものです。

「つらい」
その気持ちを認めることができると、涙が出てきます。涙と一緒に、緊張を手放すことができます。
自分の「つらい」という気持ちを、素直に認めてもいいのです。

その結果、泣いてしまったからといって、何もかも放り出してしまうわけではありません。現実が崩壊してしまうわけでもありません。
話したから、泣いたからといって、相手に依存してしまうわけでもない。

事実は、その逆です。
泣いた後は、人の心は洗われ、強い力が芽吹いてきます。それはあたかも、冬を通り越した大地から、木の芽が自然に出てくるのに似ています。

自分の心にウソをつかず、ガマンをしすぎず、感情を素直に受け止めることで、私たちはまた、進んでゆくことができます。
人の心は、洗われた後に、また進んでゆく強い力を持っています。

思いきり泣いた後は、室温の水をたくさん飲んで、ゆっくり休みます。
今までの疲れが素直に出て、ぐっすり眠れるはずです。


[終わりに]


最後に、とても大切なことを。
阪神大震災の時に、いちばん傷ついた言葉のひとつが、こんなものだったと読んだことがありました。
「まだ、悲しんでるの? いつになったら、やめるの?」
「あなたよりつらいい人は、たくさんいるんだよ」

私たちは、何度も泣いてもよい。癒されるまでにかかる時間は、人によってまちまちです。
周りと比べ、他人と比べて、自分を決めつけないでください。
また、自分と比べて、他人を決めつけないで。
あなたは、あなたの速度でよい。私たちは全員違う生きものです。


今回の震災により被災されている方、大変な思いをされている方全員に、心からのお見舞いを申し上げます。

そして実を言えば、もっとも多いPTSDの発生源は、戦争や災害という以上に、家庭内で起こる暴力やトラウマだという現実があります。
ニュースになったり、注目されたりする以外の場所、ドアーの中で起こる暴力によってPTSDを生じている方のことをもまた想い、私はこの記事を書きました。

どうか多くの方が、心の重荷を下ろせますように。
笑顔が戻りますように。
体験者の一人として、これを読む方の心に笑顔が戻ってくるようにと、心から願っています。

2011年3月19日 藤沢優月

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* 本記事は、リンクフリーです。引用のルールを守り、どうぞご引用・ご紹介ください。
記事内容に責任を持ち、無責任な情報の拡散を防ぐために、引用の際には必ず
・引用元の記載
・リンク
をお願い致します。
ひとりでも多くの方のお役に立てますように、心から願っております。
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