ケアーにつながる[5]|「ふつう」は、ない。「ふつう」を目指しても、しかたがない

ONSA WORKSHOP にご参加判断をされる前に
ケアーにつながる[5]|「ふつう」は、ない。「ふつう」を目指しても、しかたがない


| 「おかしい」「ふつうではない」という言葉に、とりわけ敏感かもしれない


ここまで、発達障害を自覚していなかった方が経験するであろう、さまざまな大変さと、その大まかな構造について、見てきました。

ひと一倍、一生懸命なのに……。
なぜか、何かが「ずれる」「噛み合わない」。
これでは、当事者であるご本人は、とても苦しいはず。



「ふつう」になろうとして、疲弊してしまう

自治体や学校の検診で発見されず、大人あるいは社会人になってから、ONSA WORKSHOP のようなワークショップ、ほかセミナー等にたどり着いてくださるのは、こんなタイプの発達障害の方々です。
いっしょうけんめいで、ひたむきな方が多い印象があります。

しかも、いっけん「ふつう」にふるまえます。
それゆえ、まさか自分が、発達障害であろうとは、気づけない。
だから、一生懸命「ふつう」になろうとして、疲弊してしまいます。


「ふつう」と言われているらしい行動を、試行錯誤で覚えて、そのようにふるまったり。
似たような言葉を使ったり、かっこうをしたり、真似たり。

でも、ふとしたことで、
「おかしい」
「ずれている」
「不思議ちゃん」

と言われてしまう。

ONSA WORKSHOP に流れ着いていらっしゃる、発達障害の方々と接していて。彼女たちは一生懸命、「ふつう」なるものの枠に当てはまろうと、身を削っていることに気づかされます。


「ふつう」とは、何なのでしょう

それならば、あらためて、問うてみたい。

発達障害の方を悩ませ、時に、定型発達をも悩ませる、「ふつう」。
そんなにまで多くの人を、時に右往左往させる「ふつう」。

そもそも、「ふつう」とは、何なのでしょう。


POINT |
よく考えると、「ふつう」とは、何なのだろう

「それは、ふつうでしょ?」
「ふつうは……」
私たちは生きていると、「ふつう」という言葉を、たくさん使います。
あらためて、「ふつう」とは何なのでしょう。


| 「ふつう」とは、空気の中に書いてある、その場その場の「常識範囲」のこと


結論をいたしますと、究極のところ、定義できる「ふつう」は「ない」。

ですが、私たちは確かに、
「いやいや。それは『ふつう』でしょう」
などと、よく口にします。

言葉を換えれば、この「ふつう」、「常識範囲」ということをさすように思います。
その「常識範囲」はといえば、どこにあるかというと、その場その場の空気の中に、文字として書いてあります。


POINT |
「ふつう」とは、その場その場の「常識範囲」をさすかもしれない
もっと大きく、その国や、その時代の「常識範囲」をさすかもしれない
その組み合わせは、空気の中に書いてある文字とともに、刻々変わる

江戸時代と、現代の「ふつう」は、異なる部分が多いかもしれない。
A公園と、B公園の「ふつう」も異なるかもしれない。
「ふつう」は、刻々変わる。

「ふつう」とは、ルールではないが、暗黙の常識範囲のことをさす

「常識範囲」であり「ふつう」とは、法文化された「ルール」と重なる部分もありますが、大多数は重なりません。
もっとあいまいで、厳密には、コンセプトが違うかもしれない。

それはたとえるなら、こんなもの。
たとえば、口に出してわざわざ言わなくとも、10人いてケーキが9個しかなかったら、10人で分けて食べる。

たとえ、そのうち1人が、
「いいですよ、私は甘いものが嫌いですから」
と言い出したとしても……。

その言葉を、字面通り真に受けて、
「では、失礼」
「本人が言っているのだから、いいですよね」
と言って、残り9人で9個をばくばく食べ出したりは、「ふつうは」しません。

おそらくですが、こんなことが起こるかもしれません。

延々と、ケーキを「どう分けるか」の相談が、続くかもしれません。
あるいは、残り1人に対して、9人からそれぞれ
「食べて」
「これも、味見して」
と、それぞれのケーキの、けっこういい部分が勧められるであろうことは、想像できます。

それがおそらく、日本の中での「常識範囲」のふるまい。
著者(私)は、甘いものが苦手ですけれど、そうやってケーキを乗せてもらったら、たぶん2-3片はいただきます。
なぜならそれもまた、日本という社会の「常識範囲」での中の、適切なふるまいでしょうから。


「ふつう」は、場所・状況・その場の雰囲気によって、刻々変わる

もしこれが、アメリカにいる最中なら、おそらく誰も、ケーキを勧めてこないかもしれません。

個人主義の国ですから、
「甘いものが嫌いなら、どうぞ、お好きなように」
「強要はしません」
という空気感に、なるかもしれません。

これがおそらく、個人主義の国の中での、適切な「常識範囲」かもしれません。


| 「常識範囲」という概念は、大事。なぜなら「常識範囲」は、社会の中での「安全サイン」の共有をさすから


常識範囲の中での、適切なふるまい。
実は、これは、とても大事なことかもしれません。

なぜならそれは、
「私は、あなたの敵ではありませんよ」
「私は、あなたと一緒に、仲良くやってゆけます」
という、言語・非言語を使ったメッセージになりますから。



「ふつう」に合わせることは、「仲間ですよ」というサインになる

欧米に、握手という習慣がありますね?
これは古来は、
「私は、武器を持っていません。あなたを刺しません。安全ですよ」
という意思表示だったといわれています。


その場その場で、微妙に異なる「常識範囲」。
つまり、その場所においての「ふつう」。

その場やその国の空気を読み、互いに上手に合わせてゆくことで、私たちは、
「私は敵ではありませんよ」
「共に、やってゆけます」
「危険人物ではありません」
「仲間です」
と、意思表示をし合って、互いの安全や快適を守っています。



POINT |
「ふつう」を探り合うことは、「仲間です」と、互いに手を差し出し合う行為かもしれない
どちらかに合わせるのではなく、上手に、あいだを取っている
共に、仲良く生きてゆくために

「ふつう」や「常識範囲」をさぐって、場の空気を読んで、さりげなく場に合わせる。
それは、時にはめんどくさいことだけれど、意味するところは、「私は、あなたの敵ではありません」「仲間です」と言い合う、象徴的な行為。


「ふつう」は、定型発達者にとっても、難しいことがある

「ふつう」「常識範囲」はこのように、国や文化、一緒にいる人たち、相手、集団の種類、状況などによって、刻々と変わります。

不変ではないし、硬直してもいない。
やわらかくて、変化して、柔軟です。

その場その場で、常識範囲が、微妙に変わるからこそ。その場の「空気を読む」ことは、定型発達の人にも、時に難しいことがあります。

このように、「これがふつう」「これが常識」という、硬直した行動や様式は、ないと言えます。
そうではなく、その場その時にいちばん適切な「常識範囲」での、一瞬一瞬の「私」の選択が、あるだけです。

そして、この一連の行動。
空気の中にある文字が読めない/読みづらい脳特性を有する、発達障害の方にとっては、どれだけ大変なことでしょう。



| 「定型発達のようになる!」ことをを目指さない。それは、意味のないこと





それゆえ、上の図の、左のような方向を目指すことは、意味のないことです。


「ふつう」は、変わる。だから「ふつうになる」は、苦しくなる選択になる

幸せになるために、「ふつう」になろうとすることは、意味のないこと。

つまり、発達障害の方が、「一応は」行動のスタンダードとされている、「『定型発達』のようになろう」「そうすれば、幸せになれるはず」と結論するのは、完全に意味のないことです。


なぜなら、定型発達の人にとってすら、このように、いわゆる「ふつう」はないから。

「ふつう」は、その場その場の「常識範囲」によって、姿を変えます。
その時の、あなた自身の選択によっても、「ふつう」は姿を変えてゆく。

ころころ変わって、一定の形がない「ふつう」を目指しても、意味がありません。
それは、とても苦しいことになります。



| 目指す方向は、「私の幸せ」。これは、誰でも同じ


目指す方向は、「あなたの幸せ」です。
これは、定型発達、発達障害、そしてこれから説明をするパーソナリティ障害……誰にとっても、重要な目標です。

「何か、自分以外のもの」になろうとしても、けっきょくは、無理が生じてくる。
そうではなく、目指す方向は、それぞれ「自分の幸せ」です。


原因が異なる。それゆえ、解決方法も異なる

「あなたの幸せ」に至る道や方法、スキル・回復のしかた。
そのやり方が、定型発達者と、発達障害者で異なるのは、当たりまえです。

もともと、土台となっている特性が違い、それゆえ、お悩みの原因が異なります。
そのため、解決に必要な方法が異なるのも、当たりまえなのです。


どんなふうに、異なるのでしょう。
次の記事でそれをお伝えして、「ケアーにつながる」の「発達障害」の回を、締めたいと思います。


POINT |
発達障害の原因     = 脳特性による先天的なもの
機能不全家族問題の原因 = 家庭環境などによる後天的なもの

原因が異なるため、解決のための方法も、おのずから異なってくる

人は、それぞれに異なる悩みを抱えています。
そして、それぞれの幸せを感じられるようになるために、解決方法を探しています。
解決方法は、自分の特性にぴったりのものであれば、それがいちばんです。





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