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ケアーにつながる[7]| いわゆる「パーソナリティ障害」は、ポピュラーに知られてきている
| 「パーソナリティ障害」とは? 信頼できる情報をもとに、理解してゆこう
「パーソナリティ障害」とは、何か。
旧名称を「人格障害」といいました。現在は、「パーソナリティ障害」と、名称が、あらためられています。
旧名称も含め、インターネットで「パーソナリティ障害」「人格障害」と引くと、いろいろな情報がヒットします。
さまざまなソースから、さまざまな情報が上がってきます。
ですが、科学的で客観的な情報を優先して、理解したい。
同時に、実感レベルでも理解したい。
それゆえ、信頼できる2点の情報源から、情報を引っ張ってきて、検討することにいたしましょう。
1点は、厚生労働省のウェブサイト、もう1点は、東京大学大学院心理研究科ベースの情報です。
| パーソナリティ障害は、「性格が悪い」ということではない
まずは、厚生労働省のウェブサイトから。
大枠を正確に知ることは、いつでも大事です。そのため、こちらの情報から見て参りましょう。
| 厚生労働省
「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」
心の健康や病気 支援やサービスに関するウェブサイト
パーソナリティ障害は、大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんでいたり、周りが困っているケースに診断される精神疾患です。
認知(ものの捉え方や考え方)や感情、衝動コントロール、対人関係といった広い範囲のパーソナリティ機能の偏りから障害(問題)が生じるものです。
注意したいのは、「性格が悪いこと」を意味するものではないということです。
パーソナリティ障害には、他の精神疾患を引き起こす性質があります。
パーソナリティ障害と合併したほかの精神疾患が前面に出ることが多いので、パーソナリティ障害は背後から悪影響を及ぼす黒幕のような病気だということができます。
治療を進めるためには、患者と治療スタッフとが協力して問題を認識し、対策を検討するという作業が重要です。
最近の研究からも、この障害は経過中に大きく変化する、治療によって改善する可能性が高いものと考えられるようになっています。
しかしながらそれは、「性格が悪いことではないこと」であることが、重要な注意点です。
発達障害の理解のしかたを、思い出してみます。
すでに見たように、発達障害は、「どこかおかしい」のではなく、脳の特性によって生じた障害でした。
遺伝による、器質的な障害であるため、ご本人に落ち度がありません。
先天的な障害ですから、障害者手帳(=療育手帳)を受給したり、サポートを受ける権利が定められています。
また、ごくごく軽度の発達障害ほど、微妙ゆえ気づきづらいことも、すでに見てきました。
「あれ?」と感じたら、「すぐに専門機関で検査」ということも、情報として共有して参りました。
では、パーソナリティ障害の場合、いったいどの部分でもつれているのか、見てみましょう。
ひとつずつ順を追って、なるべく肌感覚に近い実感で、一歩ずつ理解して参ります。
| パーソナリティ障害者は、すごく多い。しかし、受診につながる率は低い
厚生労働省のウェブに、このような記載があります。
まさに、「パーソナリティ障害」の核心をついた記事です。
アメリカの研究では、人口の15%の人がパーソナリティ障害であると報告されています (Grantら2004)。
しかし治療につながる例は少なく、実際に医療機関を受診するのは、他の精神障害を合併しているケースがほとんどです。
他の精神障害の合併については、境界性、反社会性パーソナリティ障害と薬物依存、回避性、依存性パーソナリティ障害とうつ病、回避性パーソナリティ障害と社交不安障害など、とくに結びつきが強い組み合わせがあることが知られています。
医療機関を受診するケースが最も多いのは、若い女性に多くみられる境界性パーソナリティ障害です。
境界性パーソナリティ障害の方は、しばしば自殺未遂や自傷行為を行うことがあるので、救急医療機関につながるケースも少なくないようです。
「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」
心の健康や病気 支援やサービスに関するウェブサイト(厚生労働省)
他の精神障害を合併することも、大きな特徴のひとつといえます。
しかしながら、治療につながる例が少ないことも、特徴的です。
それだけ「気づきづらい」ということが、理解のポイントとなります。
「気づきづらい」理由は、パーソナリティ(性格)の近くで起こっている障害ゆえ、「性格の問題」と誤解されやすいからと推測されます。
「人口の15%が『パーソナリティ障害』」
これは、「アメリカの」と、前置きがつくのか、それとも「全人類の」と前置きがつくのかで、状況が、大変異なってきます。
いずれにせよ、潜在健在ふくめ、これほどまでに該当者が多いとされる障害です。
それとは反対に、受診につながる率といえば、とても少ないと言われています。
| 「それは、個人のこと。」
なぜ、気づかれづらいのか。
それはやはり、「パーソナリティ(人格)」に近い部分で、起こっている障害だからでしょう。
私たちが日々現実を暮らしていると、次のような肌感覚が、きっとあるはずです。
パーソナリティ(人格)に近い部分に立ち入るのは、健康な人なら、誰だって躊躇します。
また、パーソナリティ(人格)の部分は、「個人の領域」「プライベートな領域」と考えて、尊重する場合が大半であることでしょう。
同時に、こんなことも、ありえそうです。
現実生活はみな、自分のことで忙しい。
大人は誰もが、まず「自分周り」の人生に、全力集中しています。
だから、決して悪意ではなく、その人の問題として、立ち入らない。
「見て見ぬふり」という悪意ではなく、社会マナーの問題として、他人の生活には、立ち入らない。
特に、「パーソナリティ(性格)」に関わる部分は、個人に属する、とてもデリケートな問題であるゆえ、なおさらのこと立ち入らない。
「パーソナリティ(性格)」に関わる部分で、合う合わないがある場合は、立ち入るより「離れる」。
理想論ではなく、現実ベースで考える時。一般的にこれが、大人の社会マナーと考えられています。
・パーソナリティ(人格)に近い領域で起こっている障害ゆえ、立ち入りづらい/立ち入られづらい
・日常生活の中で、信頼できうる(医師やセラピストではない)他人から指摘されるケースは、現実としてほぼない
・それゆえ、本人は気づきづらい
・気づかないまま、長い時間が経ち、悪化してしまう
先ほどの、厚生労働省の例、そのままとなります。
大人の社会の中では、周りは、礼儀として立ち入らない。
また、本人も気づきづらいゆえ、発見が遅れる。
その結果、手ひどい二次症状の下地となる症状として、発見されることが増えていると言えます。
「パーソナリティ障害」という障害が、下地として絡んでいる場合、「人生レッスン」では、桁が済まないことが多くなります。
「通常の『常識範囲』を、いちじるしく、桁外れに外れた事態」というのが、パーソナリティ障害を理解するキーポイントです。
これはおそらく、このような症状を含んでいることでしょう。
何度も転職を繰り返している。でもそれは、自分の性格が「弱い」「悪い」せいだと思い込んでいる。
異性に「しがみついて」、過度に依存してしまう。ひどい扱いを受けても、別れられない。
「死ぬ」と言う。「自殺する」とほのめかす。
摂食障害(過食症・拒食症)や、アルコール依存、物質嗜癖など、何かに過度に依存してしまう。
ただの喧嘩だと思っていたことが、気がつけば刃物沙汰・警察沙汰になってしまった。
自殺未遂や自傷行為を繰り返す。
あるいは、病院にかつぎこまれた。
常に、誰かの意見がないと、生きられない。決められない。
自分一人では、まったく生きられないぐらいに、過剰に誰かに依存してしまう……。
大人の日常の中で、このようなことを繰り返していると、いずれ大問題に発展することでしょう。
そうして、時間の経過ととともに、問題がふくらみ、常識範囲の正常な人たちの世界へ、かつぎこまれるタイミングで。
「これは、性格ではなく、障害だったのか」
こう、診断されるケースが多いと、厚生労働省のデータは語っています。
それゆえ、障害であると気づかれるタイミングが、遅れる傾向があります。
その上で、「いよいよ大ごとだ」といタイミングで、障害に気づかれるというパターンがあります。
| ふだん接している「常識範囲」のずれが、バランス感覚を分からなくする
発達障害のように、診断テストや画像解析といった、データで判別が可能となる場合。客観的なデータが利用できる場合は、障害のあるなしを、判別しやすくなります。
しかしながら、パーソナリティ障害の規定するところの、「常識範囲」を「いちじるしく逸脱」というのは、客観性を欠きます。
「いちじるしく」とは、「具体的にどれぐらい?」というふうに、多くの方が思われると思います。
「どれぐらい?」
「度合い」
とは、客観的な判断が、とても難しい問題です。
すでに述べたように、度合いの問題は、大変デリケートな領域に属しています。
加えて、環境的な問題も、多々あります。
パーソナリティ障害の当事者が、破壊的な環境的の影響で、すでにバランス感覚を崩している場合です。
たとえばですが、「パーソナリティ障害」当事者の周りの環境が、「アルコール漬け」「薬漬け」「借金漬け」という場合。
あるいは、生まれ育った環境が、暴力的な環境であった場合。
存在を、大切に扱われないこと。人格を否定されるような環境に、生育してきた場合。あるいは、ひどく扱われることや暴力・暴言が、日常の中に存在する環境で、生育してきた場合……。
このような場合、日常で接している「常識範囲」が、世間一般の「常識範囲」と、大幅にずれていることとなります。
それゆえ当事者は、自身の抱える問題……「パーソナリティ障害(=性格のゆがみの障害)」に、気づけないことが多い。
つまり、
「これぐらい、当たりまえだ」
「これぐらい、何ということはない」
「いつも、こうだった」
というふうに、バランス感覚を失ってしまいます。
みずからの、バランス感覚の歪みに、気づきづらい。それゆえ、自分の大変さに気づけず、受診につながらない。
その結果、時間の経過とともに、症状を悪化させてしまいやすくなります。
みずからのパーソナリティ(人格)の部分が、障害と呼ばれるほど、しんどい状況に至っているとは、気づけない。
それゆえ、
「あの人は、ああいう性格だから」
「性格は、変えられない」
そんな言葉で済まされ、また、本人もその言葉を、真正面から受け取ってしまう。
その結果、
「このようなことになるのは、私の性格が悪いせいだ」
「性格は、生まれながらのものだから、変えることができないのだ」
「自業自得だ」
と診断に至らずに、「性格の問題」として済ませてしまいがちになります。
・パーソナリティ(性格)に近い部分で起こっている障害
・それゆえ、「性格だから」「性格は変えられない」で済ませてしまっている場合が多い
・環境に影響されて、当事者の感覚が、バランスを失っている場合が多い
・自業自得で起こっていると考えがちになり、「障害である」と気づけない場合が多い
・自分でも気づきづらい
・周りも、触れない
この、二重の作用で、障害があることに気づけない傾向が、増してしまいます。
それゆえ、「パーソナリティ障害」自体に、「あれっ?」と気づけたら、それだけで素晴らしいことです。
気づけたら、ケアーにつながれます。
これは、当事者の未来を安全に守るためにも、とても重要なこととなります。
それでは、「あれっ?」のきっかけとなりうる、症状のヒントを、もう少し見て参りましょう。

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