心地よい暮らし、革のある暮らし:[1]いのちを循環させるために。「なめし」のおはなし

心地よい暮らし、革のある暮らし
心地よい暮らし、革のある暮らし:[1]いのちを循環させるために。「なめし」のおはなし




| いのちを大切に循環させるために




革製品とは、何か。
それは、太古からの、人間と自然の関わりを表しています。



人間は生きるために、動物の命をいただいて、現在まで生きてきました。
まず食肉として、命をいただきます。
そして、残りの革を着たり履いたり、持ったりする生活用品として、加工してきたのです。

革製品にはこのように、人間とのつきあいの、長い歴史があります。
革の歴史とは、動物の命との、関わり方の歴史でもあるのです。

「動物の命と、人間の命の循環が、形になったもの」

それが革製品です。



ONSA Yukkuri Store で扱っている製品の革も、そのようなつながりの中で、いただいています。
革を取るために、動物を殺すような活動には参加しておらず、食肉として屠られた動物の、余った革をいただいています。


そんな革製品ですが……。

ここからは、革についてのさまざまな技術や、加工方法を見てゆきましょう。
そのことによって、私たちもその一部である、聖なる命の循環に、心を留めてみたいと思います。






| なめし。 朽ちるはずのものを、加工する技術




山で、あるいはサバンナで死んでしまった動物は、土に還ってゆきます。
革は動物の皮膚ですから、本来は、そのままだと朽ちてしまいます。

「なめす」というのは、本来生き物である革を、腐らないようにするための加工のことをさします。



別の言葉で言えば、「なめし」とは、動物の皮膚だった革を、人間が使えるように転換する技術のこと。
具体的には、伝統的には植物由来のタンニンなどを使い、革を腐敗から守る行為です。


タンニンなどを使って、よりなめらかに、革を加工したり。
革の目をつめて、強くしたり。

「なめし」とは、しなやかな製品に仕上がるようにするための、革の下地づくりのことです。





| 「なめす」こと = いのちを循環させること




ここからが、革のおもしろいところ。
革が石油工業製品ではなく、「命」であることが、よく分かる視点です。

たとえば、あなたと私では、外見や生活習慣に、大きな差があることでしょう。
同じ人間でも、同じように生きている人は、一人もいません。

動物も、実は同じ。

生き物の革である以上、一頭ずつの動物は、生き方が違う。
それぞれに個性があり、生き方の「クセ」があります。


運動嫌いの動物。
健康好きの動物。あるいは、不摂生を好む動物!

当然、それらの「命」からいただく革も、質や強さがそれぞれ異なってくる。
原皮(=加工前の皮)の状態は、当然、ひとつとして同じものがない!


それら個性あふれる、バラバラなクオリティの原皮(=加工前の皮)を、製品に使える「革」にするための技術が、この「なめし」。

植物からとれるタンニンや、それに類似する薬剤に、革をひたして「なめす」。
「なめし」の技術をもってして、できるだけ均一な、綺麗な状態の「革」に加工します。

「皮」が、「革」に転換される瞬間です。



ここで、ポイントとなることがあります。
それは、動物は平面ではなく、「立体物」であること。

動物にもまた、胸やおしりがあって、その部分はカーブを描いています。
でもなぜ、私たちがイメージの中で知っている「革」は、まるで紙みたいに平面なのでしょう?


それは、この「なめし」の技術があるから。
「なめし」で、ひとつひとつ個性の違う立体(=皮)を、なるべく均一な平面(=革)に加工しているからです。





| 上手な「なめし」= 上手な生命循環




この「なめし」の技術、このように、非常に大切です。

「なめし」が上手だと、革はとても長持ちします。
でも下手な人がなめすと、湿度の影響や時間の経過で、あっという間に、革はゆがんだり、ひずんだりします。
革は、元の立体物に戻ろうと、ゆがむのです。

あるいは、1年や2年で、表面の色がかさかさとはがれてきたり、形が歪んできたりします。
これを職人は、「なめしに手を抜いている」と言います。


市場には、大量の革製品が出回っていますね。
しかし、いわゆる安い革製品は、革の質も、なめしの質も良くないことが多々あります。

なめした直後は、一見、似たような革の状態に見える。
しかし、時間が、その革の本当の質をあばき出します。


結局、すぐに使えなくなってしまうようであれば、環境にも、お財布にも良くありません。
動物の命も、無駄になってしまいます。

革の質とお値段が、ある程度比例するのは、こんな理由のため。
よい革製品はとても長持ちして、使う人と一緒に呼吸しながら、成長してゆきます。

古くなるのではなくて、「経年変化する」のです。


それは、まずはじめに、しっかり「なめす」から。
上手な「なめし」は、本来朽ちてしまうはずのものに、命を吹き込みます。






TO TOP