心地よい暮らし、革のある暮らし:[2]美しさは、考え抜かれた証。クオリティとコストのおはなし

心地よい暮らし、革のある暮らし
心地よい暮らし、革のある暮らし:[2]美しさは、考え抜かれた証。クオリティとコストのおはなし


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| 美しさは、考え抜かれた証




さあ。革職人の出番です。

職人は、届いた革を「目利き」して、製品に仕上げます。
仕事は、デザインや縫製ばかりではないのです。


まずさいしょに行うのが、「革目を読む」仕事です。

今は「なめされ済」である革ですが、もともと立体物。
現状、平面になっていますが、湿度の影響や時間経過で、革がゆがむ可能性もあります。


違う革目同士のものを合わせてミシンをかけたら、湿気で正反対に伸びてしまい、使っているうちに、変な形になってしまう可能性もある。
そんなことにならないように、職人は、革の個性や状態を読んで、製品に仕上げてゆきます。



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| 設計は、コストとも直結している




革製品になる前の「革」。
そのひとつひとつは、大きさも状態も、全部違うって知っていましたか?



なめされ済の革は、たたみ1畳、あるいは2畳もある大きさ。
これが、ロール状に巻かれて、革問屋から納品されてきます。

そして、このロールをほどくと、1つとして同じ形のない「革」が出てきます。
革製品に起こされる前の「革」は、届いてみるまで、大きさも正確な形も、予測がつきません。

考えてみれば、もともとは生き物ですから、当たりまえ。

革は石油製品のように、均一ではないのす。


そんな不確定な条件の中で、なるべく同じコンディションの製品を作って、値段が安定するように工夫して……。
革職人の仕事は、本当に大変です。


ちなみに、なめされた後の革は、端から端まで、全部使うことができるわけではありません。

ある部分のシワが、目立ちすぎる場合もあります。
その動物が生きていた時に、作った傷がある場合もあります。

ですから、
「製品の表面には、なるべく綺麗な部分。見えないところに使う革は、多少荒くても大丈夫……」
こうやって工夫することで、製品コストを抑えるのも、職人の大切な仕事。


職人の「目利き」と「腕」は、革製品の仕上がりにとって、欠かせない要素です。



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| 均一にできないことの理由




質問です。
動物のお尻が、虫に刺されるとどうなるでしょう?


答えは、なめした後の革にも、虫さされ痕が残ってしまう(ことがある)!



革は、動物の皮膚をいただいて作っているもの。
私たちに、同じ人が一人もいないように。
動物にも、まったく同じに育った個体はありません。そのため、革にはどうしても、「個性」がでます。

逆に言えば、ひとつと同じものがない……それが革の魅力。
革および革製品との出会いは、一期一会です。



あくまでも一般論にすぎませんが、一般的に、東南アジアの動物の革は、傷や虫さされの痕が多いと言われています。
そのため、安い製品に使われることが多いとされています。

一方ヨーロッパ製の革は、生育環境にも気配りがされているため、傷の少ないといわれています。
日本の革も、状態がよい革のひとつ。


その動物が育った地域によって、革の質に差がでてくる。
加えて、その動物がどのような個性を持っていたかでも、コンディションが左右されます。



たとえばですが、その動物が老体だとすれば、皺が多くなる。
右のお尻で座る癖があったなら、その部分の皮膚が硬くなる!

木にこすりつけて、おしりをぽりぽり掻く癖があったとすれば、その部分の皮膚は、さらに硬くなる!
おもしろいでしょう?


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| 無駄なく使うことも、命をリスペクトする行為




革製品を使うことは、一個の生命を、製品として受け継ぐ行為。
納品された一枚革を見ると、そのことを、ありありと感じることができます。


革の購入は基本的に、一枚単位。
届いてみないと、コンディションが分からない……いわゆる「いちかばちか」みたいなところがあるのは、先ほどご説明したとおり。


もちろん、いいコンディションの革を納品してもらいますが、化学製品ではないので、すべて完璧に同じということはありえない。
シワやゆがみがあるのが、ある意味「当たりまえ」。

ちなみに、革に寄ったシワ状のもののことを「シボ」といいます。


届いた革から、手帳カバーなら、手帳カバー用の大きさを切り取ります。
届く革の大きさが毎回変わるため、当然、1枚の革から取れる個数も、毎回変わります(!)。

シワ(シボ)を全部避けて製品を作れば、当然、綺麗な手帳カバーができますね。
しかし、これを逆から考えてみると、一枚の革から、切り取り可能な面積が少なくなるということ。


そうなると当然、1点の革製品の価格は、信じられないほど上がります。
高級メゾンの革製品が高価なのも、そのような理由によるのです。


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| 現実として、可能なこと。




原皮(げんぴ)の種類と、「なめし」の方法の組み合わせ。
これに、職人の「目利き」「腕」が加わることによって、革製品がさまざまなバリエーションに分かれること。
この感じを、少しはお伝えできたでしょうか?



私たちの皮膚にも、太陽に当たらなくてきめが細かい部分と、ひざやひじなど、きめが荒い部分があるように。
革にも、いろいろな部分があります。

繰り返しになりますが、きめの細かい……人間の皮膚でいうと上腕の内側のような、傷のない、コンディションのよいところのみを使うとすると。
そのような部分は当然、一枚の革から少しの量しか取れませんから、製品のお値段がかなり上がる。


たとえば、傷のまったくないリンゴだけを選別して売れば、選別基準が厳しいだけ、お値段が高くなってしまう。
でも、傷のあるリンゴだって、その質は、じゅうぶん良質ですね。

同じように、少しぐらい傷のある革だって、使ってゆくうちに、なめらかに変わる。
使い込んでゆくほど、革にはほどよい油分が加えられ、やわらかく滑らかになり、状態がよくなってゆくからです。


それならば、傷のまったくない革に、変にこだわるより。
毎日の暮らしの中で、自然に手に取れる革がいい。
芸術レベルの革製品ではなく、毎日の生活で、良質の革製品を楽しみたい。



ちなみに石油製品は、最初の状態がいちばん良い。
あとは基本的に、使えば使うほど、経年「劣化」してゆきます。

一方で革は、使えば使うほど味が出て、経年「変化」して、状態がよくなってゆく。
でも、いいかげんな質や「なめし」の革では、そうはならない。


ONSA Yukkuri Store の革製品。
それは、コンディションとお値段の、両方のバランスを試行錯誤しながら、作られているラインナップ。
使うにつれて味が出て、しだいに良くなってゆく革を見極め、製品に仕上げていただいています。


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