[3]ディープでおもしろい、革なめしの世界

| 「なめす」-「皮」が「革」に変わる行為
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03 | ディープでおもしろい、革なめしの世界

| 「なめし」 革製品のキーワード




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「なめし」とは、まるで錬金術。
本来なら朽ち果てて、土となって消えてしまうものに、半永久的な命を与えるのですから。
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革とは、命そのもの


革製品について、熱く語っていますが......。 根本的な疑問があります。 それは、「革とは、なんだろう」ということ。

革とは、命です。


革は本来、動物の命をいただいたもの。
ちょっと直接的な表現で、恐縮ですが......。でも、事実ですから、ありのままに。

革は、動物の皮膚です。
つまり、本当に、動物の命をいただいて、寄り添ってもらっている存在。

かつて、命だったものであり、そして今も、命。
それが、革。



本来は、朽ちてゆくはずのもの


人間もふくめ、動物の身体を、土の上にそのままにしておけば......。それはいずれ、時間の流れそのままに、朽ちて消えてしまいます。
いずれは分解され、土に還ってしまうのです。

ところが、手元の革製品はといえば、時とともに、「朽ちない」。
それどころか、時間とともに、ますます状態が良くなってゆきます。

どういうことでしょう。



「なめし」とは、時を超えさせる錬金術


革製品には、時を止める錬金術が、働いています。
それが「なめし」。


本来は朽ち果ててしまうものに、「なめし」という技術によって、永遠の命を与えた。
そうして、ずっと使えるようにした。

それどころか、使えば使うほど、「良くなる」性質に変えてしまった。

それが、革製品の本質。


本来朽ち果てる「皮」というものに、「なめし」と呼ばれる工程が、永遠の命を与えるのです。
なめされることにより、朽ち果てる「皮」は、朽ち果てない「革」に変容します。


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03 | ディープでおもしろい、革なめしの世界

| 革は、大昔から大切な一部として、暮らしの中に存在してきた




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はるか昔から、現在に至るまで。
気づく気づかないに関わらず、私たちは、命を与え養ってくれる存在に、大きな敬意を払ってきました。
命の連鎖なくしては、私たちの命もまた、存在しません。
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革には、長いつきあいの歴史がある


プラスチックも金属もなかった、はるか昔から。
私たちの先祖は、革製品を大切に、身につけてきました。


伝統文化は、革製品への愛と敬意で、あふれています。

たとえば、アイヌの方々は、鮭の命を丸ごといただき、その皮を衣類に加工します。
マタギも、厳冬の中、動物の皮を身にまとい、山へと入ってゆきます。

ネイティブ・アメリカンの文化は、革と人々の長い歴史を、そのまま物語っているようです。
柔らかな革で作られた、モカシンという履物。
ドリームキャッチャーは、革や羽で彩られています。

部族はそれぞれ、自分たちのシンボルとなる動物を持っています。
命を与えてくれ、ともに生きる動物たちとのあいだに、強いつながりを持っているのです。


命のつながりの中で、生きている


気づくか気づかないかに、関わらず。私たちは、命を与え養ってくれる存在に、大きな敬意を払ってきました。
なぜなら、その命なくしては、私たちの命もまた、存在しないからです。


現代の私たちですら、命への敬意を、失ったわけではありません。
命のつながりは、革製品の中に、感じることができます。

ひとつの製品を、心を込めて、大切にする。そのことは、いただいた命に、敬意を払う行為とになります。

日々、身体や心を、健やかに維持してゆくために。私たち人間は、動物や植物の命をいただいています。
動物を食べないという選択をしている人でも、命のつながりの輪と、無関係ではありません。
植物だって、命を持っていますから。

命のすべてが、命の連鎖の中にあります。
自覚している・いないにかかわらず、私たちは、大きな命の流れの中に、今日も生かされているのです。



「もったいない」の心意気


たとえば、市場やスーパーマーケットで出回っている、私たちの身体を作ってくれる、肉類。
命をいただいた後に、皮が残ります。

この皮を、あますところなく役立て、命に敬意を払うというのが、本来の革製品のあり方。 革製品はずっと、そのような順番の中で、生み出されてきました。

現代においてすら、私たちは、この形を踏襲しています。
ONSA Yukkuri Store で扱っている革は、このような流れの中にある革。
捨ててしまえば、無駄になってしまう皮を、「革」として活かさせてもらっているのです。

逆にいえば、皮をとるだけのために、命を犠牲にするスタイルが非難されることは、このような理由によるかもしれません。
革製品の選択の仕方をつうじて、命への敬意の持ち方もまた、見えてくるようです。


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| なめすことで、「皮」は「革」へと変容する




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「皮」から「革」への変化は、「変容」というべき、驚くべき変化。
自然の作用によって、革は、半永久の命を吹き込まれました。
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革の歴史は、とても古い


それでは、どうやって「皮」に、永遠の命を与えるのでしょう。
普通であれば、朽ち果てて土に還ってゆくしくみを、どのように変化させるのでしょう。

「なめし」という行為が、このことを可能にします。


革のなめしは、長い長い歴史を持ちます。

たとえば、古代メソポタミアや古代エジプトでは、すでに、革とのつきあいがスタートしていました。
いわゆる「羊皮紙」は、動物の皮を使った「紙」となります。


腐敗を防ぐ、さまざまな工夫と知恵


本来であれば、朽ち果ててしまう「皮」。
そんな「皮」をなめし、永遠の命を与える媒介薬......。それはもともとは、「油を塗る」ことや「燻製にする」ことから、スタートしたといいます。

何となく、理解できそうですね。
油を塗って空気をさえぎったり、燻製にして水分を飛ばしたりすれば、腐敗が防げそうです。


そんな中、「タンニン」という植物成分が、発見されました。この植物成分が、皮を腐敗させない作用があることが、偶然に発見されたのです。
するとこの方法が、一躍、「なめし」の主流に躍り出ました。


「タンニン」といえば、おなじみの、あれです。
ワインの中にも含まれていて、ちょっと渋く、ほろ苦い、あの「タンニン」。
あの「タンニン」が皮に作用すると、腐敗をストップさせ、皮に恒久的な命を与えることが分かったのです。


近代に入ると、化学薬剤も登場


時代が下がり、近代に入るにつれて......。
他の工業製品と同じように、薬剤を使うなめしの方法も、開発されました。
「六価クロム」という薬剤が、革の腐敗を止めるために、作用することがわかったのです。

皮なめしについて、もっと知りたい方は、以下のリンクをご覧ください。
本格的です。

参考情報
一般社団法人 日本皮革産業連合会
革の基礎知識「皮から革へ」


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| なめす薬剤によって、革は姿を変えてゆく




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どんな風合いに仕上げたいかで、なめしに使用する薬剤を選びます。
革は、まさに変幻自在です。
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植物成分なめしは、革らしい風合いに仕上がる


話は少し戻りまして、化学薬品のない時代には、「なめし」に使える薬剤には、限界がありました。

最初は、油を塗ったり、燻製にしたり。
そしてじき、「タンニン」という植物成分が、「なめし」の薬剤の主流となりました。

この「タンニン」なめしを理解するためには、古代エジプトや古代ギリシアの、あの、ゆったりとした衣服を、思い浮かべてください。
革のベルトや、革の履物を着ているイメージが、思い浮かぶでしょう。

そして、その革といえば、どこかのんびりした風合いで、分厚くて、もこもこした印象がありませんか?
少なくとも、たとえば iPhone ケースに使われている合成皮革のように、シャープな感じではないはずです。

植物由来の「タンニン」だけでなめすと、とても革らしい、やわらかな風合いの革に仕上がります。


植物成分なめしは、現代では高級品


現在はといえば、化学薬品を主成分として、なめす手法が一般的です。
なぜなら、その方が、手っ取り早い。
化学薬品の方が、天然成分より調合しやすいですし、成分の品質を一定に保ちやすいためです。

それゆえ逆に、あえて植物成分「タンニン」だけでなめされている革は、現在では高級品。


「タンニン」でなめすこと。
それは、植物成分の品質を、一定に保つことひとつ取っても、とても手間暇がかかります。
それだけに、この方法で「なめし」を行なっている工房自体が、とても少ない。


ですが、「タンニン」なめしの革は、革らしくて美しい風合いの革に仕上がる。
そのため、マニアックな愛好家が多いことでも、知られています。

この、こだわりのなめし方を行なっている、高級皮革。実は、ONSA Yukkuri Store でも取り扱っています。

「Italia」シリーズの革は、天然のタンニンでなめされている、とても貴重な高級革。
日本でも海外でも、セレクトショップ等の別注品で使用されることが多く、こだわりのある方が好む革です。


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化学薬剤によって、なめすこともできる


一方で、六価クロムなどの化学薬剤を使用した「なめし」は、革が強固になめされ、安定感が出ます。
いうなれば、とてもシャープな印象に仕上がるのです。


いちばん分りやすいのが、エルメスの革。
ONSA Yukkuri Store 内では、問答無用の高級革「H(アッシュ)シリーズ」の革です。

化学薬品でなめした革は、放っておいても、ほとんど劣化しないほど、お手入れいらず。
水濡れにも強く、風合いが変化しない。

とても強固になめされているため、実は、ずぼらさんにぴったり。
「使ってゆくうちに革が育ってゆく」というやり方ではなく、「なめし」自体で、製品の風合い自体を、ほぼ完成させている印象です。


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天然薬剤と化学薬剤を、かけ合わせることもできる


21世紀の現在。
大多数の革のなめし方は、この「どちらか」ということでは、ないようです。
現在は、天然薬剤と化学薬剤を、ちょうどよい風合いが出るバランスで、配合しているよう。

タンニンを使うことで、ほどよく、革の風合いを残す。
そこに化学薬剤を配合することで、革の安定感を増し、取り扱いをしやすくする。


こう見ると、「なめし」って、おもしろいでしょう。

なめしは、まさに「革の命」。
革に永遠の命を与え、愛着を持たせてくれる、キーポイントとなる工程です。



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| 目のまえの革は、どの国でなめされたもの?




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目のまえの革から、世界が見えます。
あなたの革製品は、どこから来たものでしょうか。
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その革は、どこからやってきたのだろう


日本で生産できない革の多くは、海外から輸入されて、やってきます。

ヨーロッパには、長い革の伝統があります。
革の種類も多く、腕のいい職人も多い。
また食文化も、肉食中心の文化ですから、命からいただく皮の量も種類も、日本にくらべて、はるかに多いのです。


また、命を与えてくれる動物の生育環境も、とてもいい。

いずれ、皮として命をいただく時。
皮に傷があればあるほど、製品に加工しづらくなります。

それゆえ、虫刺されが少なく、よい環境で育った命の皮は、なめしても、表面がとても美しいのです。


革1枚から、世界が広がる


ちなみに、日本においては姫路が、皮なめしで有名な場所となります。

溶液につけたり、色をつけたり......。
液体にひたしたり、洗い流したりするには、大量の水が必要。

水と、そして流通の要所がそのまま、皮なめしの要所にあたるのは、とてもおもしろいことです。


「どの国の革なのか」
「どんな『なめし』の革なのか」

こんな視点でも、革を見てみてください。
お手元の革製品から、世界が広がりますよ。



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